近年は、不動産売却で利益を出すことは難しいと言われています。
ただし、利益が出なかったときは節税ができますから、少しでも損失を取り戻しましょう。
今回は不動産売却を検討している方に向けて、損失が出たときに利用できる「譲渡損失の繰り越し控除」についてご説明します。
不動産売却で利用できる譲渡損失の繰り越し控除①自宅の買い替えをする場合
不動産を売ったときに利益が出ると、所得税や住民税がかかります。
逆に利益が出なかったときは、その損失額を所得金額から差し引けるため、税金が節約できるのです。
さらに売った年だけではなく、損失額がなくなるまで最大で4年間利用できます。
これが「譲渡損失の繰り越し控除」と呼ばれる特例です。
利用するための要件は、自宅を買い替えるかどうかによって、多少の違いがあります。
まず、買い替えるときの要件は以下のとおりです。
●5年以上所有した自宅の売却である
●所得金額が3,000万円以内である
●敷地の面積が500平方メートルまで(超えた部分は対象外)
所得金額が3,000万円を超える年は適用できませんので、注意しましょう。
また、新しい家についての要件もあります。
●前の家を売った年の前年1月1日から翌年12月31日までに購入した
●購入した年の翌年12月31日までに入居もしくは入居する見込みである
●50平方メートル以上の床面積がある
●返済期間が10年以上ある住宅ローン利用している
例えば、上記の要件を満たす年収500万円の人が、1,200万円の譲渡損失を出したとしましょう。
始めの年は「500万円-1,200万円=-700万円」となり、課税されないうえ、次の年に700万円を繰り越せます。
2年目は「500万円-700万円=-200万円」で、さらに次の年へ繰り越せます。
3年目は「500万円-200万円=300万円」で、この残った300万円に対してのみ課税されるのです。
大きな節税になることが、おわかりいただけるのではないでしょうか。
不動産売却で利用できる譲渡損失の繰り越し控除②自宅の買い替えなしの場合
自宅の買い替えなしでも、譲渡損失の繰り越し控除を利用できます。
所有期間や所得金額については買い替えのときと同じで、「敷地の面積が500平方メートルまで」はなくなり、新しい家の要件に代わって以下の要件が加わります。
●売却する自宅に返済期間が10年以上の住宅ローンの残高がある
●自宅の売却価格が住宅ローン残高よりも低い
こちらの場合では、住宅ローン残高から自宅の売却価格を引いた金額を限度額として、譲渡損失の繰り越し控除ができます。
例えば3,500万円で買った物件を、住宅ローンが2,800万円残っている状態で、2,500万円で売ったとしましょう。
すると損失額は1,000万円ですが、特例が適用できるのは「2,800万円-2,500万円」で、300万円までとなるのです。
このように、自宅を買い替えるかどうかによって適用できる金額が変わりますから、注意しましょう。